事例紹介

見直されなかった遺言書の効力はどうなる?

ご相談内容

私の父は、数年前、『所有する不動産は全部長女(私)に相続させる』という遺言書を書きました。

遺言書を書いた時点では、父が所有している不動産は、私と同居している自宅の土地(A土地)のみでした。

しかし、その後、父は新たに土地(B土地)を購入し、B土地に二女(私の妹)が家を建てましたが、父は遺言書を書き換えることなく、先日死亡しました。

 

このような場合、『所有する不動産は全部長女(私)に相続させる』という遺言書の効力がB土地にも及び、私がB土地を相続するのでしょうか?

ご対応

『所有する不動産は全部長女に相続させる』という遺言書を遺した場合、遺言書を作成した時点で所有している不動産だけではなく、死亡時点で所有している全ての不動産を長女が相続します。

よって、A土地だけではなく、B土地も長女(相談者)が相続することになります。

しかし、B土地には二女(相談者の妹)が家を建てているため、遺言書のとおりにB土地を長女(相談者)が相続してしまうと、かえってトラブルとなる可能性があります。

 

遺言書の内容が実情とそぐわない場合、相続人全員が合意することで、遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことが可能です。

この事案では、相続人全員が『B土地は二女(相談者の妹)が相続する』旨の遺産分割協議に合意したため、B土地を二女(相談者の妹)の名義に変更することができました。

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いなかつ事務所からのコメント

遺言書がある場合でも、相続人全員が合意することで、遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことは可能です。

しかし、相続人全員の合意が得られない場合は、遺言書の内容どおりに相続することとなります。

また、遺言書に基づき既に名義変更等が完了した後、相続人の合意で遺産を移動させた場合には、贈与税が課せられる可能性がありますので、注意が必要です。

 

相談者にお伺いしたところ、遺言者(相談者の父)は、『A土地は長女に、B土地は二女に相続させる』つもりでB土地を購入したそうです。ただ、遺言書を書き換えることについてはすっかり忘れていたのではないか、とのことでした。

遺言書は、何度でも書き換えることが可能です。遺言書を書いてから事情が変わった場合や、財産を遺す予定の相手が先に亡くなった場合、遺言内容を見直さないと、遺言書の内容が実情に合わない場合があります。

『遺言書があるから大丈夫』ではなく、定期的に見直されることをお勧めします。

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