事例紹介

自分で書いた遺言書の失敗例~その2 どこまでが『自宅』?~

ご相談内容

私の父親が最近亡くなり、相続が発生しました。相続人は、長男(私)と二男(私の弟)の2人です。

父は、『自宅を長男(私)に相続させる』という自筆証書遺言を作成していました。

私は『自宅の土地建物の全てが私のものになる』と思っていたのですが、二男(弟)は、『自宅って建物のことだけじゃないの?土地も入るの?』と言ってきました。

また、よく調べてみたところ、自宅の土地は2つに分かれており、建物が建っているA土地(敷地部分)と建物が建っていないB土地(庭部分)とを一体として利用したことが分かりました。

私としては、A土地もB土地も(当然建物も)合わせて『自宅』だと思うので、全部私が相続したいのですが、二男(弟)は納得できないようです。

遺言書があるので、何とか私が相続できますでしょうか?

ご対応

この事案では、『自宅とは、具体的にどの不動産のことなのか』が問題になりました。「建物」だけのことなのか、「土地」と「建物」両方のことなのか、土地はA土地だけでなく、B土地も含めるのか、『自宅』という表現だけでは分かりません。

このような曖昧な遺言書の場合、遺言書のみで、A土地・B土地までを長男(相談者)の名義に変更することはできません。

 

この事案では、相談者と二男(弟)で話し合ってもらい、相談者が、二男(弟)にいくらかお金を支払うことにより、「『自宅』とは、A土地・B土地・自宅建物のことである」と納得してもらうことができました。

 

また、名義変更の際には、遺言書だけではなく、「遺言書に記載されている『自宅』とは、A土地・B土地・自宅建物(具体的な不動産の記載)のことである」との証明書を作成し、相談者と二男(弟)に署名捺印(実印+印鑑証明書付き)してもらい、やっと名義変更することができました。

 

Comment
いなかつ事務所からのコメント

遺言書が曖昧な場合、当事者(遺言者)の真意を合理的に探究し、遺言書の文言を前提にしながら,遺言の条項と遺言書の全記載との関連,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言書の解釈をするもの、とされています。

 

要は、曖昧だからといって即座に遺言書が無効になるわけではなく、遺言を書いた人の状況や気持ちを考慮し、なるべく有効になるように解釈していこう、というものです。

ただ、その場合は、解釈の仕方をめぐって相続人間で揉めることも多く、最悪の場合は、何年もかけて裁判手続きで決着をつけることになってしまいます。

 

トラブルを避けるために遺言書を作成したのに、曖昧な表現であったために、かえって遺言書の解釈を巡って相続人間で争いが起こる場合があります。

遺言書の文言は,誰が読んでも明瞭明確で,色々な意味に解釈できないようにする必要があります。

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