事例紹介

自分で書いた遺言書の失敗例~その1『家族にあげる』~

ご相談内容

私は、結婚後に自宅を新築し、自分の配偶者と子どもたちと一緒に暮らしていましたが、私の母親が高齢で一人暮らしが難しくなったので、自宅に引き取って一緒に暮らしていました。

その母が亡くなり、母の遺言書が出てきたのですが、『全財産を〇〇(私の名前)とその家族にあげる』と書かれていました。

このような遺言書は有効でしょうか?

ご対応

遺言書は、『誰に』、『何を』、『どれくらい(金額や割合)』、遺すのかが明確ではなくてはなりません。

今回の相談では、「その家族」とは、具体的に誰を指すのかが問題になります。相談者には、配偶者と子どもが数人おり、子どものうち一人は別居中でした。その場合、別居中の子は「その家族」に入るのでしょうか?
また、相談者と同居している人は、全員「その家族」になるのか、という疑問も生じます。例えば、相談者が、「相談者自身の親族」や、「配偶者の親族」と同居している場合、その人は「その家族」に当たることになり、遺産をもらえるのでしょうか?

関係各所に相談・確認しましたが、結論として、亡くなった方が『誰に』財産を遺したかったのたが明確ではないため、この遺言書は使えませんでした。

 

Comment
いなかつ事務所からのコメント

この遺言書は、公正証書ではなく、自分で書いた遺言書(「自筆証書遺言」といいます。)でした。

遺言書としての要件は満たしていたので、『無効』ではないものの、内容に不備があり、実務上『使えない遺言書』でした。

仕事上、「自筆証書遺言」を拝見する機会は多いのですが、この事案のように表現に問題があり実務上使えない遺言書が非常に多いです。

遺言書は、『何となく言いたいことが伝わる』だけでは、実際の手続きには使えません。法律的に正確な表現で、誰が見ても分かるように記載する必要があります。

 

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